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Daisaburō Kawaguchi

Daisaburō Kawaguchi

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The details (from wikipedia)

Biography

川口大三郎事件(かわぐちだいさぶろうじけん)とは、1972年に革マル派が早稲田大学学生の川口大三郎をリンチし殺害した事件。

概要

1972年11月8日、早稲田大学を支配していた革マル派は、早稲田大学第一文学部の学生である川口大三郎を中核派と誤認して同日午後2時頃同文学部キャンパスで学生自治会室に拉致し、約8時間にわたるリンチを加えて殺害した(享年20)。革マル派は、遺体を東大構内・東大付属病院前に遺棄した。遺体はパジャマ姿だった。「死因は、丸太や角材でめちゃくちゃに強打され、体全体が細胞破壊を起こしてショック死」(朝日新聞 1972年11月10日朝刊)したもので、「体の打撲傷の跡は四十カ所を超え、とくに背中と両腕は厚い皮下出血をしていた。外傷の一部は、先のとがったもので引っかかれた形跡もあり、両手首や腰、首にはヒモでしばったような跡もあった」(同)という凄惨なものであった。

被害者の川口大三郎は、1952年静岡県伊東市に生まれる。三人兄姉の次男。小学校五年生の時父親が病死し、以後母親に育てられる。伊東市立東小学校、同南中学校、静岡県立伊東高校を卒業。1971年4月早稲田大学第一文学部入学。部落解放運動などに参加していた。第一文学部自治会執行部を握る革マル派に失望し、1972年頃中核派に近づき同派の集会などに参加するが、まもなく中核派にも失望し、その感想を級友や母親に語っていた。早稲田学生新聞(勝共連合系学内新聞、現在は廃刊)など右派系学生団体や早稲田精神昂揚会とも接触があった。中核派は、「全学連戦士・川口大三郎同志」などと述べたが、実際には中核派とはほとんど関係なかった。

この事件で、1972年12月11日まず革マル派メンバー2人が逮捕された。その後、1973年10月21日、22日に5名の革マル派活動家が逮捕された。逮捕メンバーのうち5名が起訴され(1名は分離公判)、1974年7月31日分離公判の被告(事件当時一文自治会書記長)に懲役5年の判決、1976年3月18日統一公判の被告4名全員に有罪判決が下った。

虐殺糾弾・自治会再建運動

遺体は翌日発見され、革マル派は殺害を正当化する犯行声明を発表した。

この革マル派の対応は広範な学生の怒りを呼び起こし、早稲田大学では全学的な革マル派および革マル派と癒着する大学当局糾弾の動きが沸き起こり、革マル派は追いつめられる。革マル派全学連委員長馬場素明は、責任をとって全学連委員長を辞任し、「徹底的に自己批判し、深く反省する」と訴えた。だが学生の怒りは収まらず、数百人から数千人規模の革マル派糾弾・抗議集会が連日続き、1972年11月28日第一文学部学生大会を皮切りに理工学部を除く各学部で学生大会が行われ、革マル派自治会執行部がリコールされ、自治会再建をめざす臨時執行部が選出された。一文、教育、政経、社会科学の各学部ではまもなく正式執行部も選出された。左翼内ゲバ犠牲者は多いが、このように広範な学生が虐殺糾弾に立ち上がったのは、川口大三郎事件が唯一である。

だが、選出された臨執、新執行部はさまざまな学生部分の寄せ集めで、成立と同時に内部の意見対立が起きた。意見対立は1973年入学式への対応(黒ヘルメットをかぶって乱入・会場占拠するか、静かなデモをおこなうか)などで表面化した。1973年5月には村井資長大学総長に対する大衆団交が行われたが、これも一部の学生が授業中の村井総長の教室に乱入して総長を拉致しておこなったものであった。村井総長は一度はより広範な学生との総長団交を約束したが、まもなく混乱を理由に約束を破棄した。(第3次早大闘争)。村井はその後、早大原理研究会の勧めで「川口記念セミナーハウス」建設に自身の別荘地を提供し1976年に竣工したが、統一教会の修練場となっていることを知り、週刊誌に告発、統一教会から名誉棄損で訴えられ、十数年にわたって係争した。

結局、早大当局は革マル派を温存する姿勢を示し、各学部再建自治会を公認せず、革マル派が主導権を握る社会科学部、商学部自治会執行部への自治会費交付、革マル派実行委員会による早稲田祭開催容認(パンフレット売り上げなどが革マル派の収入となる)を行う。これにより、革マルのK、機動隊のK、当局のTの「KKT」という認識が学生の間に広まっていく。当局のこの姿勢の背景には、革マル派が早大で衰退すると新左翼各派や民青が学内で跋扈し学内がより混乱するという判断があったと思われる。1973年4月以降反攻に転じた革マル派のテロの前に、各学部再建自治会は形骸化・自然消滅していった。虐殺糾弾・自治会再建運動は1973年11月8日の虐殺一周年集会が分裂したことで、事実上収束した。早稲田大学全学行動委員会などはなおも闘う姿勢を見せ、図書館占拠をおこなったものの、大学当局と機動隊に守られた革マル支配をうちやぶることはできなかった。

以後、1994年に大学総長に就任した奥島孝康が、1997年の早稲田大学学生部長宅盗聴事件を機に革マル派排除の姿勢を見せるまで、大学当局と革マル派の癒着、蜜月関係は続いた。1997年になると、学生運動は日本全国で衰退し、革マル派を排除しても新左翼などが早大学内で復活する恐れはもうなかった。

他セクトの反応

この頃、他大学を拠点とする他のセクト(中核派・社青同解放派)と革マル派の「内ゲバ」は、互いの組織壊滅を目的とした、凄惨な「殺し合い」へとエスカレートしていく。血で血を洗うこれらの内ゲバは学生運動を弱体化させ、大衆が新左翼から離れてゆく大きな原因の一つとなった。川口君虐殺糾弾運動はセクト(党派)の暴力反対から出発したが、結果はセクトの暴力、内ゲバをいっそう激化させることになった。

中核派

中核派は、「全学連戦士・川口大三郎同志」などと述べ、事件の責任を追及する姿勢だったが、前述のように実際には中核派とはほとんど関係なかった。

1975年 (昭和50年)3月14日 革マル派が中核派の最高幹部・本多延嘉を殺害(中核派書記長内ゲバ殺人事件)。

社青同解放派

  • 神奈川大学を拠点としていた社青同解放派は、川口大三郎事件の責任ある革マル派を追及する姿勢に出る。解放派はブントと共にWAC(早大行動委員会)に助太刀する。
  • 1973年5~6月、 早稲田大学で革マル派全国部隊を3度にわたり粉砕。

革マル派はそれに反感し、

  • 1973年 9月、革マル派約150名が社青同解放派の拠点神奈川大学を襲撃する事件が起こる、解放派(革労協)が反撃し、レポ二人(革マル派東大生と革マル派国際基督教大生)を殺害(神奈川大学内ゲバ殺人事件)。

川口大三郎事件を扱った文芸作品

  • 村上春樹 『海辺のカフカ』(新潮社 2002年) 高松の私設図書館長の佐伯さんは20歳の時に東京の大学で恋人を殺されているが、その殺され方は川口大三郎事件を明らかにモデルにしている。(村上春樹は事件当時まだ早大第一文学部に在籍中だった)
  • 小嵐九八郎 『蜂起には至らず 新左翼死人列伝』(講談社 2003年)「第十二章 斃れた一人のシンパの墓」は川口大三郎君を扱う
  • 鴻上尚史 『ヘルメットをかぶった君に会いたい』(集英社 2006年)作者が深夜テレビでみかけた1969年のヘルメット姿の初々しい美少女を捜すが、その少女は三年後に川口大三郎事件の犯人の一人となる。
  • 松井今朝子 『師父の遺言』 (NHK出版 2014年)「九 政治の季節の終焉」に、著者が参加した川口君虐殺糾弾運動の記述がある。
  • 桐野夏生 『抱く女』(新潮社 2015年)「第三章 一九七二年十一月」に、主人公三浦直子の兄で早大革マル派幹部活動家の和樹が早大で事件を起こした容疑で、刑事が直子の家を訪ね両親に事件を説明する部分があるが、事件内容は基本的に川口大三郎事件である。
  • 栗本薫「ぼくらの事情」(小学館『栗本薫・中島梓傑作電子全集』第三巻 2018年2月9日収録)1978年に書かれ未完・未刊行だった作品。『ぼくらの時代』続編として構想され、作中に川口君事件を模した石川君事件が登場する。

脚注

  1. ^ 高木正幸「新左翼三十年史」(土曜美術社)133頁
  2. ^ 立花隆「中核VS革マル(下)」(講談社文庫)30頁
  3. ^ 読売新聞1973年10月22日、同23日
  4. ^ 読売新聞1974年7月31日夕刊
  5. ^ 読売新聞1976年3月19日
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