Yasushi Okada
Quick Facts
Biography
岡田 康志(おかだ やすし、1968年 - )は日本の分子生物学者。医師、東京大学博士(医学)。一分子生物学やバイオイメージインフォマティクスの研究に従事し、キネシンが分子一つで動くことを発見。オリンパスと共同で、高速・高分解能なスピニングディスク超解像顕微鏡法も開発した。文部科学大臣表彰「科学技術賞(開発部門)」受賞者。
東京大学の廣川信隆の下で研究を開始し、2011年より理化学研究所生命システム研究センター(QBiC)で細胞極性統御研究チームのチームリーダー。2016年5月からは東京大学大学院理学系研究科物理学専攻・教授を兼任。2019年10月より東京大学医学系研究科・細胞生物学教室教授を兼任。
来歴・人物
大阪府生まれ。1981年灘中学、灘高等学校に進学。高校時代はファインマン物理学を読んだり受験と関係ない数学の勉強をし、30万ページの読書をこなした。
1987年、東京大学理科三類に入学。医学部へ進むか理学部生物化学科へ進むか迷うが、大隅良典らの助言もあり、東京大学医学部へ進学する。「筋肉の収縮」に興味を持ち、廣川信隆の研究室に出入りするようになる。1993年に学部を卒業し、博士課程に進学。1994年には日本学術振興会特別研究員に採択。博士課程途中の1995年から助手を務める。
岡田は一つ一つの分子が実体としてどのような物理的動作をしているのかを特殊な光学顕微鏡を使用して可視化する分子モーターの研究に取り組む(一分子生物学)。従来二つの分子モーター・キネシンが二足歩行のように動いているというのが定説だったところ、岡田は分子一つで動く場合があることを突き止めた。これには数年を費やし、他のことをやるようにと廣川に苦言を呈されながらの成果だった。
2005年頃には指導する大学院生とともに、キネシン2・線毛・鞭毛の働きによって心臓が左右反対になる原理を解明する(内臓逆位も参照)。2011年には論文博士で学位を取得。同年、理化学研究所生命システム研究センター細胞極性統御研究チームリーダーとなり、大阪大学大学院生命機能研究科招聘教授も兼務。「細胞内極性輸送の制御機構」 「細胞骨格・細胞内輸送の超解像ライブイメージング手法の開発」「個体内での細胞骨格・細胞内輸送の高分解能イメージング技術の確立とそのための個体内ゲノム操作技術の開発」といった研究に取り組む。
2015年にはオリンパス株式会社と共同で、約100ナノメートルの空間分解能と10ミリ秒の時間分解能を持つ超解像蛍光顕微鏡を実現。これは「スピニングディスク超解像顕微鏡法」と名付けられた。これまでの超解像度顕微鏡の100倍の速度であり、世界一のシャッター速度を実現したとされた。
2016年5月、岡田は理化学研究所のチームリーダーと兼務のまま、2016年5月に東京大学大学院理学系研究科物理学専攻・教授に着任。2017年には「共焦点顕微鏡をベースとした超解像顕微鏡の開発」のテーマで、文部科学大臣表彰「科学技術賞(開発部門)」を受賞した。
著作
著書
(共著)
- 合原一幸、岡田康志『「1分子」生物学 ―生命システムの新しい理解』岩波書店、2004年9月。ISBN 4000050508。
(編著)
- 岡田康志 編著『初めてでもできる!超解像イメージング ―STED、PALM、STORM、SIM、顕微鏡システムの選定から撮影のコツと撮像例まで―』羊土社〈実験医学別冊〉、2016年6月。ISBN 978-4-7581-0195-0。
解説
- 「「ナノ」スクリューで体の左右が決まる--脊椎動物初期胚における左右軸決定機構」『ナノ学会会報』第4巻第1号、2005年11月、 39-43頁。
- 「ライブイメージングのための超解像顕微鏡」『光技術コンタクト』第51巻第593号、2013年4月、 4-12頁。
- 「ゲノム編集革命」『現代化学』第521号、2014年8月、 22-27頁。
- 「超解像光学顕微鏡によるイメージング」『パリティ』第28巻第7号、2013年7月、 25-30頁。
- 「ノーベル化学賞 超解像蛍光顕微鏡法の開発」『パリティ』第29巻第12号、2014年12月、 37-39頁。
- 高井啓、岡田康志「3色の高輝度発光タンパク質プローブの開発と応用」『生化学』第88巻第5号、2016年、 669-673頁。
論文
学位論文
- 岡田康志『The motility mechanism of the single-headed kinesin motor, KIF1A』東京大学〈博士論文(乙第17575号)〉、2011年10月26日。(和文題名『単頭型キネシンモーターKIF1Aの運動機構』)
代表的な原著論文
- Y. Okada and N. Hirokawa (1999). “A processive single-heated motor; kinesin superfamily protein KIF1A”. Science 283:1152-1157. PMID 10024239.
- M. Kikkawa, Y. Okada and N. Hirokawa (2000). “15Å resolution model of the monomeric kinesin motor, KIF1A”. Cell 100:241-252. https://doi.org/10.1016/S0092-8674(00)81562-7.
- Y. Okada and N. Hirokawa (2000). “Mechanism of the single-headed processivity; Diffusional anchoring between the K-loop of kinesin and the C terminus of tubulin”. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97. https://doi.org/10.1073/pnas.97.2.640.
- M. Kikkawa, E. P. Sablin, Y. Okada, R. J. Fletterick and N. Hirokawa (2001). “Switch-based mechanism of kinesin motors”. Nature 411:439-445. https://doi.org/10.1038/35078000.
- Y. Okada, S. Takeda, Y. Tanaka, C.I.B. Juan and N. Hikorawa (2005). “Mechanism of Nodal Flow: A Conserved Symmetry Breaking Event in Left-Right Axis Determination”. Cell 121:633-644. https://doi.org/10.1016/j.cell.2005.04.008.
- T. Nakata, S. Niwa, Y. Okada, F. Perez and N. Hirokawa (2011). “Preferential binding of a kinesin-1 motor to GTP-tubulin-rich microtubules underlies polarized vesicle transport”. The Journal of Cell Biology:245-255. https://doi.org/10.1083/jcb.201104034.
- H. Yajima, T. Ogura, R. Nitta, Y. Okada, C. Sato and N. Hirokawa (2012). “Conformational changes in tubulin in GMPCPP and GDP-taxol microtubules observed by cryoelectron microscopy”. The Journal of Cell Biology 198:315-322. https://doi.org/10.1083/jcb.201201161.
- S. Hayashi and Y. Okada (2015). “Ultrafast superresolution fluorescence imaging with spinning disk confocal microscope optics”. Mol. Biol. Cell 26:1743-1751. https://doi.org/10.1091/mbc.E14-08-1287.
脚注
注釈
出典
- ^ “岡田, 康志, 1968-”. Web NDL Authorities.国立国会図書館. 2016年5月21日閲覧。
- ^ 生命科学DOKIDOKI研究室, p. 1.
- ^ 吉川雅英「構造から探る生物分子モーター・キネシンのしくみ」『日本物理学会誌』第58巻第4号、2003年4月、 232-238頁。(p.234、のp.3)
- ^ 夢プロフェッショナル, p. 3.
- ^ “理化学研究所と共同開発 超解像蛍光顕微鏡法の新技術 ~生きた細胞内の微細構造を高速で捉え、生命現象の解明促進に貢献~”.オリンパス (2015年4月15日). 2016年5月21日閲覧。
- ^ “シャッター速度世界一の超解像蛍光顕微鏡を開発 ―生きた細胞内で動く微細構造の観察に成功―” (プレスリリース), 理化学研究所, (2015年4月15日), http://www.riken.jp/pr/press/2015/20150415_1/ 2016年5月21日閲覧。
- ^ 樋口秀男 (2017年4月12日). “岡田康志教授が、平成29年度文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)を受賞”. 東京大学大学院理学系研究科・理学部. 2017年9月21日閲覧。
- ^ 夢プロフェッショナル, p. 2.
- ^ “平成29年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞 受賞者一覧”. 文部科学省 (2017年4月11日) 2017年9月21日閲覧。
- ^ Schué et.al. 2014.
- ^ 岡田康志 2011.
- ^ “学校別 世の中、上には上がいる 私が見た大秀才たち ...”. 現代ビジネス. (2012年8月6日). http://gendai.ismedia.jp/articles/-/20944?page=3 2016年1月23日閲覧。
- ^ 夢プロフェッショナル, profile.
- ^ 高井・岡田 2016, p. 273.
- ^ No.46号 - 公益財団法人千里ライフサイエンス振興財団
- ^ 夢プロフェッショナル, p. 4.
- ^ “岡田康志”. researchmap (2016年7月28日) 2017年9月21日閲覧。
- ^ “連携大学院・連携講座教員リスト”. 研究室一覧.大阪大学大学院生命機能研究科招聘教授FBS. 2016年1月24日閲覧。
- ^ 高井・岡田 2016, p. 673.
- ^ “細胞極性統御研究チーム”.理化学研究所 生命システム研究センター(QBiC). 2016年5月21日閲覧。