Aron Seishiki

青識 亜論（せいしき あろん）は表現の自由を重視する日本の男性ネット論客。2014年頃からSNSで活動している。座右の銘は「私は君の言うことに反対だ。しかし、君がそれを言う権利は命を賭けても守ろう」。2019年10月にTwitter上での「フェミニストによるハラスメント」を意味する「#フェミハラ」というハッシュタグの積極的な使用を提唱した。2019年11月に「アンチフェミ」側として「フェミ」側の石川優実らと公開討論を行い、Twitter上で大きな関心を集めた。同年11月や12月に、萌え絵批判やツイフェミに関する『ABEMA Prime』の討論にも出演し、2020年のオンライン討論会にも出演。萌えキャラが使用される歴史と文脈や「#フェミハラ」によるオタクの傷つきを指摘し、フェミストとアンチフェミの対立に「寛容」や「対話」を呼びかけた。

公開討論、出演

2019年（令和元年）11月16日にベルサール新宿グランドタワーで開催された「これからのフェミニズムを考える白熱討論会（石川VS青識）」では、#KuToo運動で知られる石川優実が「フェミ」、当時Twitterで2万人以上のフォロワーを持っていた青識が「アンチフェミ」として、小保内太紀の司会により公開討論を行った。青識はオタクとフェミニスト間の対話が必要と合意できたものの「オタクが被害者だとは受け入れてもらえなかった」と後に振り返った。両者による討論会はTwitter上で大きな関心を集め、双方の支持者や批判者がハッシュタグ「#これフェミ」を通じて議論を交わした。

しかし、この討論後に石川が青識を批判したブログが討論の合意と意義をひっくり返すものだとしてネット上で議論が紛糾。各陣営の批判や暴言が激しくなり、青識が「寛容と対話」を訴えたものの事態は収集がつかなくなった。坂爪真吾は「対話を目指して開催されたイベントが、両者の対話の不可能性を立証する形」で終わる「後味の悪い結果になってしまった」と記した。なお、司会の小保内に運営の至らなさを指摘された青識はそれを認め、「修正すれば、より良い対話の場を作ることができるという兆しでもあるはず」とした。

2019年（令和元年）11月22日放送の『ABEMA Prime』に福島みずほや宇佐美典也、千田有紀、乙武洋匡、ハヤカワ五味らとともに出演。『宇崎ちゃんは遊びたい!』の女性キャラクターが起用された献血ポスターが炎上した件や、職場での服装・身だしなみの性差などの討論に参加した。青識は「性的対象化したり、差別的に扱われたりすること」の危険性に理解を示しながらも、そうなるかどうかは「文脈に依存」すると語った。また、これフェミの話になった際には「言葉での共通合意がなかなかできないという実感を得たところで、なかなか合意までたどり着くのは難しいと感じている。」と振り返った。

同年12月31日にも『ABEMA Prime』に千田有紀や柴田英里らとともに出演し、ツイフェミについての討論に参加。青識は「Twitterがリミッターを外してしまい、いくらでも相手を殴っていいみたいに感じてしまう役割」になっているとして、ツイフェミが「否定しづらい“正義”の問題に安直に接合して」と主張。また、「私が発言し、討論しようと言っても、女性の専門家にはなかなか乗ってきてもらえないところもある。ここも不思議な溝があって、それをいかに埋めていくかがこれからTwitterでの議論を建設的にする1つのポイントだと思う」と語った。

2020年（令和2年）12月5日、オンライン開催の「シン・これからの「フェミニズム」を考える白熱討論会」に出演。萌え絵批判に対し、「萌えキャラが自治体や公共団体のキャンペーンに起用される背景」として作品の舞台という文脈やファンとの交流の歴史を指摘。『宇崎ちゃんは遊びたい!』の女性キャラクターが起用された献血ポスターが炎上した件では、コミックマーケットにおいて赤十字が活動してオタクが献血に協力してきた「絆」と「物語」があってのコラボだったと解説した。また、オタク側に対し「理由もなく炎上させられる事が傷ついて辛いということを言語化する必要がある」と語り、「共生のルールは、対話で作るのが最善」とした。

フェミニスト側の討論相手である高橋幸は、性差別やジェンダー・ステレオタイプと思わしき表現は批判しつつも、「小規模自治体の聖地巡礼スタンプラリー用ポスターまで大規模に燃やしてしまっていいのかについては判断が難しい。ゼロイチで語れない、難しい問題」との認識を示した。また高橋は「両者が話し合いのできる回路を開いておく必要がある」と語り、青識を「顔を合わせて話してみれば、話せる人」と評した。司会進行を務めた主催者の坂爪真吾は討論会に手ごたえを感じ、「何らかの形でこのような機会を続けていければいいと思う」と語った。

SNSにおける活動と発言

2014年（平成26年）頃から主にTwitter上で表現の自由を巡る問題について発言を続けており、「呟きは個人の見解です。所属組織とは一切無関係です」としていた。バーチャルYouTuberのような美少女キャラクターを運営しており、信念的美少女「ヴォル子さん」というマスコットキャラクターをアイコンに使っている。2019年時点のフォロワー数は2万人以上であったが、2024年6月時点で約1万9千人。座右の銘として「私は君の言うことに反対だ。しかし、君がそれを言う権利は命を賭けても守ろう」を掲げている。

2019年（令和元年）10月に、「フェミニストによるハラスメント」を意味する「#フェミハラ」というハッシュタグをツイッターで積極的に使用することを提唱した。フェミストとアンチフェミの対立に「寛容」や「対話」を呼びかけ、2020年のオンライン講演会では「今は敵対者を攻撃するのが楽しいという人が増えて、対話を否定する方向にネット全体が進みつつある」「対話が成立しているという実証の積み重ねで否定していきたいし、対立を煽る人を退けていきたい」と語っている。

2022年（令和4年）5月、青識がTwitter上で主アカウントとは別に、女子大生フェミニストになりすましたアカウントも運用していたことが発覚する。青識が批判している女性を擁護したり、逆に批判したりしていたといい、青識はそれらを認めた。なりすまして観察・発言すること自体に倫理的問題はなく、炎上に加担しない新たなフェミニスト観察用アカウントを作成予定と発言していたが、無関係なクリエイターを炎上に巻き込みかねない発言に対して反省と謝罪を表明した。

なお2015年（平成27年）にも、それ以前から表現規制派のアカウントを持ち「表現規制を主張する側のロジックを勉強している」と宣言していた。中里見博らの「憲法食堂」などに参加した際に、規制派の理論が共有できていないことに失望したり、規制派の論理はより洗練できるはずと感じたりしたため、「なら自分が規制派になればよい」と考えたことが動機だという。また、2022年の発覚後に無言アカウントではなくフェミニストとして発言していた理由を尋ねられた際には、フェミニストの主張に対する周囲の反応を観測したかったためと返答している。

2024年7月末、Xのアカウント（@Frozen_Sealion）がXルールに違反をしているとして、アカウント名どおり、アカウントが凍結された。

これ以前の石川優実との関係については「これからのフェミニズムを考える白熱討論会」節を参照。

2020年（令和2年）2月に青識はTwitterにおいて、性被害を受けた人に対して石川優実が「被害者ぶるな」と罵声を浴びせたことがあると誤認させる内容を投稿。石川から東京地方裁判所に提訴されるが、青識は「投稿は論評（風刺）を表明するもので、実際の発言を紹介するものではないフィクション」と主張した。裁判官は風刺と認識したフォロワーもいたかもしれないとしながらも、「閲覧者はそのような人だけではない」とし、投稿は名誉棄損として慰謝料など損害賠償金の支払いを命じた。青識は「風刺も含め、SNSは自由な言論空間であるべき」と語り、控訴した。

なお、青識は「石川氏がかなりダメージを受けているようなので」として当該ツイートを削除。2023年（令和5年）12月には東京高等裁判所で裁判官からの和解案を受け入れ、慰謝料として33万円の支払いと「今後はお互いに相手の名前を出してインターネット上で意見を言うことをしない」ことで和解した。ベリーベスト法律事務所の杉山弁護士は慰謝料について「低額であると訴えるために必要な費用も回収できない」とし、名誉棄損やハラスメントなどの抑止力という観点から「最低でも100万円を基準にすべき」と指摘している。